あえて、「紙の本」にこだわる

電子書籍元年といわれた2010年から、今年で5年目を迎えます。
ビジネス書や情報商材、またコミックなどの分野では随分普及したように思えます。
自費出版の分野でも、電子書籍による制作を勧める向きもあります。

ここでもう一度、紙の本と電子書籍の特徴を整理してみましょう。

【電子書籍】

携帯性に優れる
タブレットやスマートフォン、電子書籍端末などに保存することで、千冊分以上のデータを持ち歩くことができます。

データの活用
辞書や検索、音声化などへの展開ができます。

端末に左右される
電子書籍の規格はまだ統一されていませんので、異なる規格の端末では読み込むことができません。
また、端末の破損等によりデータが消失する恐れもあります。

【紙の書籍】

特別な装置が要らない
紙の本を読むためには、特別な装置は必要ありません。
ただその本だけがあれば良いのです。

書き込みができる(印を付けやすい)
紙の本であれば、本に書き込みをすることも、端を折って印をつけることもできます。

壊れにくい
電子書籍のように、データの破損で読めなくなるということは、まずありません。
保存状態さえよければ、それこそ何百年でも保存することができます。

電子媒体と紙媒体として比較すると、このようになります。
機能的な面でいえば、携帯性と検索性に優れた電子書籍と、体感的に読書ができる紙の書籍ということになります。

一方でこれを、自費出版という観点で考えてみます。
紙媒体で自費出版を行う最大の強みは、紙の本という「物」としてそこにあることだと思います。

立派な装丁の本は、書斎のインテリアの一部になったりします。
実際手にした時の重み、紙とインクの匂い、表紙の手触り。
それくらい紙の本は、「物」としての存在感が際立っているのです。
自費出版のような思い入れの強い本ですと、完成品を手にした時の充実感は格別のものがあります。
これは残念ながら、電子書籍にはないものでしょう。

ただしこれは、決して電子書籍を否定するものではありません。
携帯性や検索性、音声や動画の埋め込みなど、電子書籍ならではの長所があるのも、また事実です。
ビジネス書、実用書、辞書など、電子書籍に適した本もあります。
これは適材適所で、そのコンテンツや利用方法に応じて、最適な媒体を選ぶのが良いと思います。

北斗書房の母体は印刷会社です。
だからという訳ではありませんが、これまで紙の本づくりにこだわってきました。
特に自費出版の領域では、完成品を手に取っていただいた時に、最大限ご満足いただけるような本づくりに取り組んできました。

かつて音楽業界では、LPCDに、CDiTunesにという世代交代がありました。
環境の変化や技術的の進歩には目覚ましいものがあります。
今後、自費出版を電子書籍でつくる必然性が出てくるかもしれません。

それでもなお、今のところは、紙の本にこだわった自費出版の専門会社でありたいと考えています。
著者に寄り添い、本づくりを通じて「想いをカタチにする」お手伝いをさせていただきたいと思います。