引用とは ―著作権法で定義する4つの条件―

他人の著作物を勝手に使うことが著作権法で制限されていることは、前回ご説明しました。

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その一方、著作権法では著作権侵害にあたらない場合も定められています。
おおきくふたつ「私的使用のための複製」と「引用」です。

人の目に触れることが大前提の自費出版では「私的使用」が認められる場合は限られていますので、ここでは主に引用について説明させていただきます。

【私的使用のための複製】
著作権法上では「個人的(家族、親戚、友人などの狭い範囲)に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用すること」と定義されています。
自費出版にあてはめると、身内の、ごく親しい人だけに配布する場合がこれに当たります。
それ以上の配布を想定している場合は、私的使用の対象外になりますので、ご注意ください。

【引用】
私的利用以外に他人の著作物を著作権者の承諾なしに利用できる方法として、「引用」があります。
引用については、著作権法で次のように定義されています。

「公表された著作物は,引用して利用することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲で行なわれるものでなければならない。(著作権法第32条)」

「引用の目的上正当な範囲」は、一般的には次のようなことが求められています。

1.引用することが、オリジナルの文章(本文)を表現するために必要であること 
他者の著作物を引用する場合は、他人の文章などを引用することで自分の本文の主張が補強され明確になるなど、引用することの必然性が求められます。

2.主量的にも質的にも自分のオリジナルな文章が主であり、引用部分が従であること
引用部分が大半を占める場合は「無断転載」となり著作権の侵害に該当することもあります。
引用は必要最小限に留める必要があります。

3.引用部分とその他の部分が明確に区別し引用文は改変しないこと
引用を行い場合は、どこが引用した部分か明確にわかるような配慮が必要です。
区別する方法は、「」(かぎかっこ)や“”(ダブルコーテーション)などの記号でくくる方法、文頭を2文字くらい下げる方法(字下げ)、書体を変更するなどがあります。
また、データの一部を変更したり削除したり、タイトルを変えて引用することは、「改変」にあたり(同一性保持権の侵害)、著作権者の承諾が必要となります。

4.引用された著作物の出典が明示されていること
出典とは「誰が、いつ、どこで」発表されたものかを示すことです。
具体的には「著者名・タイトル・出版社」などがこれにあたります。
表示方法は、引用部分の末尾に記載、冊子の巻末に「参考文献」として記載するなどの方法があります。

引用は、著作権法上で認められた行為ですが、同時に法律による制限もあります。
定められたルールを守り、堂々と人に示せる作品づくりを目指しましょう。

関連リンク

・弊社作品が紹介されました ― 引用の実例  

・引用について:歌詞を引用する場合 

・自費出版と著作権2018