自分史いろいろ ― その4 日記のススメ

日本の文学には「日記文学」というジャンルがあります。
著名なところでは、永井荷風の「断腸亭日乗」や菅原孝標女の「更級日記」をはじめ、たくさんの作品があります。

もう少し身近な例ですと、戦争を体験された方が当時の陣中日記を書籍化したものや、海外赴任中の日記などもこれに当たります。
日々の出来事や行動、その時々の思いとその変遷は、まさにその人の歴史であるといえます。

自分史づくりでは、日記があると資料収集などの下準備が大変はかどります。
当時の出来事や思いが自分自身の言葉で記されている、重要な資料となるからです。
しっかりした年表と日記があれば、自分史の骨組みは8割方出来たといえるでしょう。

本来はここから原稿を書き出す訳ですが、せっかく長年書き溜めた日記ですから、日記として自分史に仕上げるものひとつの方法です。

日記は書き出しに大きな特徴があります。
「○年○月○日 晴」という具合に、年月日や天候が文頭に入ることです。
これは日記の特徴的なフォーマットで、これが入るだけで日記に見えてしまいます。

このフォーマットを自分史にも踏襲します。
文頭に日付や天候が入ることで文章から生まれるイメージがより具体的になります。
これは、読み手を文章に引き込むことにもつながります。

ひとつ注意点としては、日記に登場する人物のプライバシーへの配慮です。
ほとんどの場合、日記は他人に読ませることを想定して書かれていません。
そのため、あまり意識せずに自分以外の人のことを赤裸々に書いてしまっているかもしれません。
思いがけずトラブルになる恐れもありますので、日記を今一度読み返すことをお勧めします。

日記帳に書くという昔ながらの日記の他にも、最近では、ブログやWeb日記のようにインターネット上のサービスを利用する、スマートフォンのアプリを使用するなど、日記の書き方も選択肢がたくさんあります。

日記を通じて過去から今につながる自分を見直すことができます。
自分史にまとめるかどうかは別にして、今からでも日記にチャレンジしてみるのも良いかもしれません。