【洛中徒然(1)】埒(らち)が明(あ)く ~上賀茂神社と神馬~

 上賀茂神社には「神山号」という名の神馬がいます。二の鳥居前の神馬舎では、日曜・祝日に白い優雅な姿を見せてくれています。

 現在、生きた神馬のいる神社が全国的に減る傾向にありますが、そのなかでも白い馬は珍しいそうです。

 神馬とは、神様の乗用に供するために神社に奉納した馬のことで、正しくは「じんめ」と読みます。雨乞いの時は黒毛、晴れを祈願する時は赤毛という具合に、祈願の目的によって奉納される神馬の毛色が使い分けられていました。この神馬が、時代が下がるにつれ絵馬の風習に変わっていったのです。

 5月5日に催される競馬会(くらべうまえ)は「徒然草」にも出ている古い行事です。参道の馬場を二頭宛で走る競技で、馬と観客を隔てる柵は埒と呼ばれており、これが「埒が明く」という言葉の語源になったという説があります。競馬会では騎手と馬の呼吸が合うまで埒を開けないことに由来するそうです。

 日常で用いられる言葉が、意外なところに由来することがままあります。日本語の面白さは、こんなところにもあるのかもしれませんね。